プリンス録音術 Prince In The Studio The Stories Behind The Hits 1977-1994 Jake Brown
冷え込んできた。
ちょっと時間があったから、ようやく出たプリンスのスタジオワークの本を読んだのだが、驚愕の事実がいろいろあったので忘れないようにメモをしておく。
いやあ、凄すぎて笑いしか出てこないですね…
プリンスはフィンガードラマーだった
LM-1に対する偏愛っぷりは多くの項を使って説明してあるものの、びっくりしたのはレコーディングが普通と全く違うこと。
普通はクリックトラックがあって、生ドラムをオーバーダブするけど、プリンスはクリックも聞かずにドラムを録音していたとのこと。
一人で録音しているから大丈夫とかそういう問題じゃないので、ひっくり返った。
24トラックでは全く足りないはずだけれど、一人で録音していてスピードが遅くなるのを嫌ったとのこと。
また、パターンを演奏していて、それを止めてフィルを叩いたりという記述で驚愕。これですわ・・・フィンガードラマーやん。
プリンスのようにドラム・マシンを操る人は、あとにも先にも見たことがない。あれはパフォーマンスだった。曲の途中でマシンを止めて、指でパッドを叩いてフィルをやったら、また、マシーンをスタートするんだ。流れているパターンはひとつなのに、そう聞こえなかった。
プリンスはドラム・マシンのミックス・アウトプットを複数のフット・ペダルに流していて、フットペダルをドラムマシンの上に設置すると、ディレイ・ペダルやフランジャー・ペダルを手で叩きながら、ドラムマシンのサウンドにエフェクトをかけていた。
彼は、一つのパターンを使って、途方もないパフォーマンスをしていたんだ。すごく格好が良かった。
あれが出来たのは、頭の中で曲ができあがっていて、ドラムのフィルがどうなるかわかっていたからだろう。大半の人は、曲がなければドラムは演奏できないけれど、プリンスは音楽が全くない状態で、ブレイクなんかもいれながら、完璧なドラム・パフォーマンスができた。あれには驚愕したよ。
Prince In The Studio P345-346
リアルタイムで録音していたというのは全く考えていなかった。
フィンガードラムしているということがはっきり分かる資料としてはこれしかないかも。
世界初のフィンガードラマーは誰かという記事を書いたが、もう、機材が出来た時にはフィンガードラマーは生まれていたと考えるのが自然なんだろうな。
今、フィンガードラマーがやるような、それぞれのパッドにエフェクトをアサインするようなのはかなり前にプリンスはやっているということですね…
まとめ
機材的にもサンプラーの使い方がちょっと普通じゃなくてのけぞった。
ストリングス、自分の曲からサンプリングしていたりするのは考えもしなかったです。
最後まで驚きの連続でした。
サンプリングソースを自作曲からまかなえるのは多作だったことと、自分で演奏できたことが大きい。
ミシェル・ンデゲオチェロが自曲をサンプリングして再構成したりしていたのも、プリンスの影響か。
ボーカルは自分でとって判断するのは最も難しいと思うのだが、一人でジャッジをしてたんですね。
エンジニアリングに関しては、一般的なイメージよりはるかに知識があったのは間違いない。
スティービー・ワンダーもレイ・チャールズもパンチ・イン、パンチ・アウトが超絶早いのは有名な話だけれど、これだけ一人で作っていたならそうだろう。
レイ・チャールズがおそらくボーカル多重録音の先駆者で、マーヴィン・ゲイ、スティービー、プリンスの系譜があって、ディアンジェロにつながっただろうというのも垣間見えた。
ギターをサンプリングしてキーボードをオーバダブするとか、超面白い話が満載。
ボーカルのレコーディングも面白い。びっくりしますよ。
レコーディングに興味がある方、ブラックミュージックに興味がある方、プリンスのファンの方に激しくおすすめです。
電子書籍以外は買わないというルールなんですけど、これは買わずにはいられなかったです…
メイヴィス・ステイプルズやジョージ・クリントンなど、ペイズリー・パークの他のアーティストの話ももっとあったらと思うけれど、続刊に期待ですね…
追記:2018/12/15 今年のLoopにPrinceのエンジニアであったSusan Rogersの公演がありました。
印象的なのは「私が知っている中で最も強固な労働倫理を持っていた」と述べているところですかね。この本でプリンスと関わったエンジニアがみな述べていることですけど。楽しいだろうけど、みんな体壊しますね…
洋書もあります。ちょっと固有名詞の訳が日本語だと一般的なじゃない訳もあるので、こっちのほうが読みやすいところもあります…
追記:2024/06/05
Princeが愛したLinnDrumはこういうものです。
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