今回はAbleton友の会の誇るRack職人、Nutaanさんの作品の紹介です。これは凄いもんだぜ…
一体どういう事が出来るか。超人ササキさんがデモを作ってくださいました。楽しいですよ…
Random Slice Simplerとはどういうものか
Simplerに読み込んだループなどをスライスの再生順序を変え、全く別のループに組み替えるものですね。
パラメーターの変化で全く違うループに変化させられるので、制作にもライブ・パフォーマンスに使えます。
この手のもの、Swingが出来ないことが多いんですが、現在のバージョンではSwingさせることも可能になっています。
着想を得るもよし、そのまま楽曲に使うもよし。可能性は無限にあります…
ダウンロード
NutaanさんのNote記事から無料でダウンロードできます。今後も新しいRackを制作したら、無料で配布するとのことです。太っ腹すぎる…
他にも凄いRackをたくさん作ってらっしゃるんですよ。
このあたりは、Abletonならではの楽しさだと思いますので、今後も友の会の皆さんのRackなどを紹介していこうと思います。私のSSLエミュレートチャンネルストリップも紹介しようかなあ。
使用方法
ダウンロードしたら、解凍してください。そうするといくつもRackがでてきますね。
今回はRandom Slice SimplerをAbletonのユーザーライブラリにドラッグしてください。
- Random Slice Simplerを立ち上げたら、任意のサンプルをSimplerのこちらにD&Dしてください。
再生ボタンを押しても音が出ない。絶望や…そう思うあなた。大丈夫ですよ…
Random Slice Simplerはデバイスなのでそのままでは音は出ません。
MIDIクリップを作って、ノートを入れましょう。C1に私はノートを入れてみました。
パラメーターの説明
左側のマクロでどの音価が中心か決定されます。ちょっとパラメータがわからないんだけど言う方は、左側をまずいじってみてください。
面白いのが、8分音符中心のドラムループであっても、1/16などにすれば16分音符中心に再構成されることですね。
Synced Rateは音価。ここで4分音符、3連系統などを切り替えることが出来ます。
RangeはSimplerに読み込んでスライスしたものの再生範囲。
ね。Random Gateはベロシティの範囲を決定します。
Probabilityは発音確率です。127で常に音が鳴ります。
低くなると再生されない確率も上がるので邪悪なことも出来ますよ。
Repeat 8th〜などは指定した音価がランダムで鳴ります。どんないなたいループでもグリッチ感が出せて楽しいです…
Swingパラメーターがあるので、8分音符基調のものでもSwingさせられるというハチャメチャな仕様ですよ。フフフ…
やろうと思ったら当然ハーフタイムシャッフル的にも出来ます。
こういう面倒くさいことが一瞬で出来て音楽に集中できるRackを作れるのは凄いですよねえ。Nutaanさんは他にも素敵なRackを作ってくださっているので、今後も紹介していきます。
追記:2025/01/20
解説動画を作りました。無茶が出来るのはよく分かるでしょう…
追記:2025/01/21
ドラムやボーカルサンプルで使うことをNuttanさんは想定されて作成されたようですけど、もちろん他の楽器にも使えます。
ドラムなんかは部分的にはリニアドラミングみたいになって、ちょっと異様なファンキーさがありますね。
昔のハウス的なアプローチでファンクをやってみました。
おじさんたちにはこれはハイパーなRecycleだよと言ったら、楽しさが伝わりますかね…
この種のデバイスでSwingを導入するのは難しいのですが、Nutaanさんがうまく処理してくださってます。
ありもののループから発想するのもよし、弾いたものをRandom Slice Simplerで加工するのも面白いのでは?
今回はドラムを加工して跳ねさせてた状態でベースを弾いて、更にそれを聞いてギターを弾くという形にしました。ここからまた弾き直すなんてのも面白いんじゃないかと思います。モーダルなものと相性はいいですね。
では、開発者のNutaanさんのコメントを御覧ください。
「Random Slice Simpler」を作ったきっかけ
今回ご紹介いただく「Random Slice Simpler」を制作したきっかけを説明します。
私の制作フローでは、Spliceで仕入れたDrumやVocalなどのLoop素材を、SimplerのSliceモードで再構築することが多いです。
MIDIキーボードでフレーズを打ち込むこともありますが、Arpeggiatorを使って偶発性のあるフレーズを探しています。
ただこのやり方における難点は、カッコいいフレーズを作るために以下のような作業が必要なことです。
・Simplerの前にArpeggiatorをインサートする.
・MIDIで複数のノートを鳴らす。
・Sliceされた素材の数に応じて、全ての音がトリガーされるようにMIDIノートを調整する。
(SimplerやDrum RackはMIDIノートのC1を基準にサンプルを配置するため、C1から12st〜24stぐらいのレンジでMIDIノートを打ち込むことが多い。)
・Gateの調整やVelocityにランダマイズをかける。
上記の作業は1〜3分くらいあればできますが、正直面倒です。(笑)
結果が同じであれば、制作スピードは速い方が良いですし、単純作業ではなく、クリエイティブな作業に頭のエネルギーを充てたいです。
何度も同じエフェクトをインサートしたり、同じオートメーションを書いたりしていることを、全てRackでまとめたい・Macroでコントロールしたいと考えたのが、「Random Slice Simpler」を作ったきっかけです。
「何か面白いRackを作ろう」ではなく、「制作の効率化」のためにRackを作りました。
「Random Slice Simpler」の作り方
普段はここまできちんと事前に設計することはないですが、このRackを作るときの考え方をまとめました。
(実際はもう少し複雑な仕様のため、一部を省いています。気になる方はこのRackからリバースエンジニアリングに挑戦いただくと参考になるかと思います。)
【実現したいこと】
・カッコいいBreak BeatsやVocal Chopを”簡単に”作りたい。
【要件定義】
- 一つのMIDIノートを鳴らし続けるだけで、フレーズを生成したい。
- 複雑なフレーズを大量に生成したい。
- MIDIノートの発音間隔は8分 or 16分音符をベースに、適度に32分や64分音符も含んだGlitch感のあるフレーズを作りたい。
- Velocityのランダマイズの強さや、ノートの発音頻度(Chance/Probability)を調節したい。
- トリガーするMIDIノートの範囲を調整したい。
【仕様】
- Arpeggiatorを使ってノートを鳴らしている間は、指定したRateで音が連続で鳴るようにする。
また、複数の「Pitch(MIDIエフェクト)」をRackでパラレル化して、自動で和音が鳴るようにする。 - 「Random(MIDIエフェクト)」を使って、発音するMIDIノートにランダマイズをかける。
- 1/32や1/64のRateのArpeggiatorをRackを使ってパラレルでインサートする。
また、マクロでArpeggiatorのオンオフをコントロールする。 - 「Velocity(MIDIエフェクト)」に標準搭載のランダマイズ機能を使う。
また「Random」でMIDIノートをSimplerのトリガー範囲外(C1より低いノート)に変えることで、発音しないノートを作る。 - 「Random」で変化するMIDIノートの範囲を指定する。
また、SImplerにインポートする素材に合わせて、この範囲を調整できるようにマクロにアサインする。
まとめ
これぞAbletonの面白いところ。楽器が弾けても弾けなくても楽しめますね。
Nutaanさんの発想力が素晴らしいです。
自分演奏したものをオーディオにしても面白いですね。久々にドラム叩いて録音したものをRandom Slice Simplerで遊んだところ、なかなか面白いものになりました。
偶発性から作りたいなら、ずっと鳴らしっぱなしにしてリサンプリングしても面白いでしょうし、それこそ生演奏と組み合わせるような人なら録音したものを持っていっても面白い。
可能性がありますね。
Nutaanさん、ありがとうございました!
Nutaanさんの新曲はこちら。
NutaanさんのSNSなどのアカウントはこちら
コメント