いい本でした。勉強になりました…
効果音、映像を作っている人やゲームを作っている人には必要性はわかっているものの、いざ作るとなると敷居が高いですよね。
音声教材、動画を作るのが仕事の一部であるのですが、意外に効果音が必要な場面は多い。
効果音のライブラリも使いますが、なかなかしっくりするものがなかった。自分で調整はするもののなかなか思い通りにはならない。
そもそもそういうのを専門でやって来たわけではないので、音楽の知識を転用してなんとかやって来たのですが、方法論を持っていなかった。この効果音の作り方バイブルは素晴らしかったです。いちばん大事な考え方を学べます。
DAWを使っている人には、考え方がわかったらすぐ応用できる。
lo-fi hip hopを作る人なんかは嬉しいんではないでしょうか。あ、spliceからとったのねみたいなのあると一瞬で聞く気なくなりますもんね…
いわゆるEar Candy的なものを自作するのにも考え方が役に立ちますね。
DAWを使ったことがない人でも、無料で使えるFLを用いてDAWの操作まで丁寧に、そして具体的な作り方も説明してあります。DAWを持っている方なら、FLでなくても考え方は充分学べますしね。
ゲームで効果音が必要な人には特に嬉しいんではないでしょうか。
サンプラー、リミッター、リングモジュレーター、リバーブの活用など効果音を作るときに知らなければならない知識は多い。でも効果音だけ作りたい人がDAWを学ぶとなると習得コストがめちゃくちゃ掛かった。効果音に必要なエフェクトの使い方と、音楽を作るのに必要なエフェクトの使い方は違うわけですし。
でも、効果音の作り方バイブルなら過不足なく学べますね。習得コストが低い。試行錯誤の手間を減らせる。どのソフトや機材使えばいいか調べるだけでも莫大な時間取られますもんね。
素晴らしいのは章を追って読んでいけば、全体の工程が理解できることです。
必要な機材、ソフト、加工の仕方。録音で注意する点、編集の効果的な方法など網羅的な内容になっています。録音は特に学ぼうと思っても効果音という観点で録音を説明しているものはなかったはず。そういう意味でも非常に有用です。
音楽を作っている人でも学ぶところはたくさんあると思います。
フォルマントでバリエーション作るのなんか、1つのサンプルからいろいろ作るのも応用できそうです。同じ質感だけとちょっと違うハイハットをつくったりできたりするなと思いつきますもんね。
筆者の小川さんはゲーム業界出身ということで、ゲームの具体例が多かったですが、自分の仕事だと音声教材アプリのテストなどにすぐ応用できそうです。
効果音を作りたい人、サウンドデザインに興味がある人には激しくおすすめです…
なんと言っても素晴らしいのは効果音を作るときの考え方が身につくところです。
考え方がわかる
表紙の惹句にあるように、考え方がわかります。これ、大変なことです…
DAWを使っている人にとっては、サンプラーやエフェクトの知識があっても、効果音を作るためにどう考えればいいかわからないことが多いですよね。
自分だと、シンセでUFO音作るとか、光線銃的な音を作るとか、アナログシンセでやったようなことは覚えてますけど、まあ、そんなもの音声教材には必要ないですよね…
じゃあ、そもそも音声教材や学習用アプリでどういうものが効果音で必要なのかと考えると、自分の中で整理されていなかった。
機能をまず理解してないと、ただ闇雲に実験しているだけになりますよね。ボンクラすぎる…
効果音の作り方バイブルは1章から効果音の機能を定義してくれてます。びっくりするくらいわかりやすいです。
第1章 “役割” 効果音の意図
1-1 点としての役割
1-2 線としての役割
1-3 没入感を高める役割
1-4 記号としての役割
1-5 没入感と記号の複合役割
1-6 ウソとしての役割
1-7 誘導の役割
ゲームを例にとってある例が多いんですけど、こういう見取り図があれば簡単に応用できる。
自分の仕事だと、アプリ上のテストの効果音は1−4記号としての役割、次の章で学習を進めたり、選択するときの効果音は1−7の役割ですね。こうやって構造を理解できていたら仕事は随分と楽だったはず…
この効果音がそもそも何を目的としているかとわかっていないのになんか違うんだけどと試行錯誤してました…
行動経済学でいうナッジを効果音でかなり出来るんだなと読んでよくわかりました。もっと早くよみたかった…
2章もめちゃくちゃおもしろかったです。
周波数スペクトルを使って考え、オノマトペでイメージというのは素晴らしかったです。シンセで考えたことはあったけれど、それぞれ子音まで含めてEQして考えるというのは考えたこともなかったです。
録音の方法などが書いてあるだけだと、機材を選ぶのも大変ですよね。
そういうところにも目配りされている。
比較的な安価な機材を紹介してあったり32bit floatの恩恵などもわかりやすく説明されてます。DAW使う人なら常識でも、そうでない人を置いてきぼりにしない工夫が随所にあります。
正直、いいところを上げたらきりがないのですが、考え方がわかるということが最も分かる例を上げておきます。すごいですよ。
5章までで、作るための考え方や、調整などについて述べられているんですが、最後が特に素晴らしい。6章が実際に作るときにこのフローチャートに当てはめて考えていくという構成になっています。しっかり見取り図が作れる。自分で作るときもこう考えればいいというのがわかる作りになってます。
通読すればどうやれば作れるかのあたりはつけられる。動画や断片的な情報で学ぼうとすると時間がべらぼうに掛かった。これ一冊読んでしまえば、あとはずっと学べますね。普段から注意する点が変わる。
営業の意味ももちろんあるんでしょうけど、親切だなと思ったのは最後に効果音は買うべきか、作るべきかというコラムがあることですね。
自分の仕事の場合は音声教材を作るときに比重として大きいのは、テキストを作ったり、台本書いたり、芝居のディレクションすることです。
これは代わりがきかない。
でも、コンテンツを作るときに全部進捗管理出来る人間がいたほうがいいからコロナのときの業態変換で音声周りも含めて全部やらざるを得なくなった。
バジェットに限りがある以上、自分で全部やるのは現実的じゃない。
音声、音楽までは自分でやったけど、流石に効果音は荷が重すぎました…
効果音、ちょっとした修正なら自分でやればいいけれど、試行錯誤するより、発注したほうが良かったと思います。そのほうが質をあげられた。
でも、読んで良かったです。
発注するにしてもアウトラインを理解しているかどうかでお互いいい仕事できますしね。読む前だと的確な発注出来なかったと思いますし。余計なコストが掛かったはずです。
勉強になりました。いい本は読んだ後に自分で考える余地がありますね。こうしたら面白いものが作れるとか、アイデアがどんどん出てくる。
音声データ、プロジェクトファイルもダウンロードできますし、なかなか学べない情報が書籍で高速に学べて面白かったです!
追記:2023/05/18
著書小川さんのOGAWA SOUNDのサイト
目次です。これを見たらどれくらい効果音を作るための考えがコスト少なく学べるかわかると思います…
第0章 “体験” ゼロから効果音を作ってみよう
0-1 体験版で効果音作りの準備
0-2 7つのSTEPで初めての効果音を作る
0-3 スマートフォンを使って風の音を作る
0-4 初めての効果音作りを終えて
第1章 “役割” 効果音の意図
1-1 点としての役割
1-2 線としての役割
1-3 没入感を高める役割
1-4 記号としての役割
1-5 没入感と記号の複合役割
1-6 ウソとしての役割
1-7 誘導の役割
第2章 “再現” 論理的な効果音の作り方
2-1 構造を分析する
2-2 周波数スペクトルを分析する
2-3 “本物の音”を体験する
2-4 オノマトペを使ってイメージする
2-5 創造と組み立て
第3章 “創造” 実験的な効果音の作り方
3-1 実験を行う前に
3-2 マイクを発生音として使う
3-3 エフェクトをかける
3-4 周波数を変化させる
3-5 モノに触れ、音を出す
3-6 音のアンテナを張る
第4章 “採集” 音を録音する
4-1 ハンディレコーダーを活用する
4-2 マイクの録音方式でステレオイメージを作る
4-3 マイクの焦点を合わせる
4-4 最新技術を使って録音の効率を上げる
4-5 フィールドレコーディング前に行う10の掟
第5章 “調整” 効果音を編集する
5-1 不要な音を除去する
5-2 求める音の長さに調整する
5-3 求める音質に調整する
5-4 音のバリエーションを調整する
5-5 エンベロープで音の輪郭を調整する
第6章 “実践” 効果音を考えながら作る
6-1 フローチャートで考える効果音の作り方
6-2 初めての効果音制作フローチャート(初級編)
6-3 ゲームが求める音を作るためのフローチャート(発展編)
6-4 もしフローチャートで判断できなかったら…
6-5 効果音制作実例① 心臓の鼓動音を作ろう!
6-6 効果音制作実例② 足音を作ろう!
6-7 効果音制作実例③ 人が倒れる音を作ろう!
6-8 効果音制作実例④ レーザーガンの発射音を作ろう!
6-9 効果音制作実例⑤ 爆発音を作ろう!
映像制作の整音に関わるのこちらの本も勉強になりました。音楽の知識で転用できるところがあっても、違う職種だから書籍で学べるのは習得コストが低くていいですね…
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