暫定的に4つの地域に分けたんですけど、これも結構大雑把なくくりなんですよね。
とはいえ、それぞれ特徴的なスタイルがあることをりかいすることでファンクの全体像は理解しやすくなると思います。というか、ソウルやR&B、ブルースなどもそうですね。
東海岸といっても範囲は広い。ディスコ、ヒップホップ、go-goなどの発祥の土地でもある。
その後の流れも重要なので、go-goも取り上げます。ディスコは単独で記事にしてもいいと思いますが、音楽的にはファンクの流れを組むものなのでこちらでも取り上げます。前後の流れも理解して初めて分かることはかなりある。
踊るための機能を追求したようなところがある。1グルーブでひたすら持っていくようなものも多い。
あとは、ラテン音楽の影響が大きいのもあるんでしょうね。ラテンというのも超大雑把なくくりですけど。パーカッションが多いことも特徴でしょうか。
学べば学ぶほど多様なスタイルがあることがわかって楽しいですね。ファンク沼にようこそ…
では、東海岸も見ていきましょう。
東海岸
ディスコなどは東海岸のソウルやファンクと捉えたほうがおそらく流れはわかりやすいのではないでしょうか。
いわゆる4つうちはMFSBのEarl Youngが確立したスタイルです。今回の記事ではディスコ、Go-Goについて詳しくは扱いませんが、(いずれやりたい。譜面とピアノロール付けて)興味がある方はぜひ。
ブルース、ソウル、ファンク、ディスコ、ヒップホップ地続きなのは勉強していくとわかってくるはず。
では、まずNJのKool&the Gangから聞いていきましょう。ファンク時代はセルフ・コンテインドグループと言って、バンドですべて演奏できるスタイルが多かった。ハウスバンドが演奏するソウル時代との大きな違いですね。
ジャズのバックグラウンドがあるバンドが多い。Kool&The Gangもそうですし、Earth,Wind&Fireもそう。Ohioもそうですね。ハーモニー的に高度な内容を扱っている理由もわかりますね。
Kool&The Gangの初期はジャズ・ファンクバンドです。
ディアンジェロのSend it onに影響を与えた曲という方がわかりやすいですかね。わかりにくいか…
ハイハットは8で刻んでいるがキックは16裏で入っていたりする。ギターやクラビネットとの組み合わせで16ビートを表現している。
ベースのRobert Bellは印象的なベースラインを作りますね。この人も映像をみると初期はプレベですね。
ファンク時代になると、コードの動きが極端に少なくなることもよく分かるのでは。モードに基づいたアプローチが増えるのが特徴とも言えます。
モードだとミクソリディアン・モードとドリアン・モードが一番使われます。ミクソリディアン・モードはブルース的なドミナント7th中心のもので使われることが多い。
そして、ミクソリディアンとドリアンの違いは3度がマイナーがメジャーかだけですから混在しているもの多くあるわけです。
じゃあ、ブルースと同じやんと思われるかもしれませんが、ブルース進行ではなくなってくるのも多いところに特徴がありますかね…
ホーンはドリアン・モードに基づいたリフを吹いている。
クロスオーバーするヒットはなかったものダンスミュージックとしての強度が非常に高いバンドなので取り上げたかった。いなたくてかっこいいですね…
ファンクバンドは1モードで演奏して展開部分でモーダルインターチェンジしたり、リフやキメが入るという構成が多いのですが、シンプルな構成でも楽器の抜き差しやコーラスなどでも成り立つことがわかるんではないでしょうか。
ヒップホップとファンクのつながりを示したかったのでFatbackBandを取り上げたかったということもあります。Sugarhill Gangよりリリースは早いのかな。
今のヒップホップのイメージから考えるとBPMが速くてびっくりするかもしれないですね。
東海岸のバンドということでBlack Heatも取り上げたい。
Kool & the Gangのカバーがこれが一番有名ですかね。Black Heatはもしかしたらサンプリングする人の方が知ってるかもしれないですね…
Wu-Tang Clanのサンプリングで有名かな。
B.T Expressもサンプリングはかなりされている。
これはBeyoncéの2006年のDéjà Vuでドラムが使われてます。ブレイクビーツがかっこいいものが多いのも、ダンス向けということなんでしょうね。ブレイクで盛り上がったところをヒップホップは使っていたわけですから。
配給網などを考えることも大事で、その地域で作られたものはその土地でしか出回らないものも多くあったわけですしね…
B.T ExpressはグレイトなSam Taylor Jrが曲を書いてます。
Maxine Brownのバンドリーダーからキャリアを始めたようですが、ソウル初期からファンクまで駆け抜けたギタリスト。グレイトなソングライターでもあります。ブルースの名手でもある。いろんなバンドのバンドリーダーもしてますね。
仕事の幅も広い。ファンク、ソウル、ブルースを繋ぐ重要なミュージシャンだと思うのですが、あんまり取り上げられることはないので書いておきたかった。
上手いんだけど、ファンク的なうまさだから聞き込まないとわかりくいですかね…
素晴らしいタイムだと思います。無駄なことを全く弾かない。多くのバンドリーダーやアレンジ、作曲ができる人のギターですね。
また、80年代R&Bの重要プロデューサーの一人であるKashifはB.T Express出身です。
Kasifの革新性も今や語られることは少ないかもしれないから、80年代R&Bとかやれたら書きたいなあ。
印象論ではなく譜面や機材というミュージシャンの観点から書いておきたい。需要ないでしょうけど…
Close to Youをソウル的にやると聞かない人からするとこういう感じになるのも驚愕するかも。原曲全然ちゃんと聞いてないんだろうなというのもあったりして、またそれも味わい深いんですよ…怒られが発生しそうですけど。
ねちっこいカバーで最高です…
ファンクバンドはファンクとソウル的なレパートリー持っているのが普通なのでヒット曲だけ見ていると魅力がわからないこともありますね。
東海岸のバンドはタフなダンスバンドという印象がありますね。とにかく踊らせることに特化しているバンドが多い。
1コードや同じ構成で盛り上がるのは特徴といえば特徴かも。躍る時にグルーブが変わるものってダンスフロアで機能しにくいというのもあるかもしれません。ディスコが発達した土地ということを考えるとうなづけますね。
それはGo-Goにも受け継がれていきます。とにかく長いんや…
Chicはディスコ期のバンドですが、音楽的にはディスコと分類して良いのか迷いますね。ディスコ・チャートに入っていたらディスコと分けても良いんでしょうが、いわゆる4つうちでもないですし…
Nile Rodgersはモードを使った作曲も得意で、ボイシングも平均的なギタリストとかなり違います。究極のファンクギターという感じがしますね。4度体積のコードなども使う。ジャズのバックグラウンドはハーモニーに現れてますね。
リズム・セクション全員、え、どうなっているというのというタイム感で真似をすることなど不可能です…
ベースラインも全く持って平均的なディスコとは異なりますね…Chicのアンサンブルはそれぞれのプレイヤーのスタイルがあってのものですね。BernardもTonnyもいないChicはやっぱり別物だなと思ってしまいますね。
Chicを取り上げる以上、Sugarhill Gangは紹介しないといけないですね。
Hip hopとファンクのつながりがこの上なくわかりますね。
基本書籍。古典であるリズム&ブルースの死を書いたネルソン・ジョージの書籍です。今となってはもちろんカバーしてない内容もあるのですが、書かれた当時の空気も理解しておくとより楽しめると思います。受容の過程は後からだとわかりにくいですしね。
動画ならネットフリックスのヒップホップ・レボリューションも歴史を理解するにはいいですね。
特に地域性はヒップホップに受け継がれたのはわかるかと。
フィラデルフィア
ディスコの歴史的経緯を考えるのならばフランスのディスコティークから考えるべきなのでしょうが、あくまでプレイヤー目線、ファンクという音楽との連関においてこの記事では捉えていきます。
フィリー・ソウルはファンクの一形態であると理解したほうが、構造上は理解しやすいためです。
この曲がディスコのドラムのもっとも典型的なパターンを確立したものと言われています。1973年リリース。
キックが4つうち、バックビートのスネア、オープンハイハット。16ビートが基準になっているという点では紛れもなくファンクと特徴を同じにしているのですが、ハーモニーはちょっと違いますね。モーダルなものが多いファンクに比べると、ソウルの流れを継いでいると言えます。
後にこのパターンはハウスに受け継がれていきます。
MFSBのEarl Youngがこのパターンを確立したドラマーです。
#4度ハーフディミニッシュなどはモータウンなどでもよく使われるパターン。こういうところにソウルの影響はハッキリ見える。
ストリングスや豪華な管の導入が特徴と言えます。ファンクではTp,As,Ts,Tbの構成、最小構成の場合はTp,Tsなどが多いのですが、フィリー・ソウルの場合はフレンチホルンが入っていたり、大編成のサウンドですね。
ファンクの場合はTpは超人が多く、え、そんな音域出るという人もいるので採譜するとびっくりすることが多いですね。Tpが2つでオクターブで動くことも多い。
TbがTsより上を吹くことも多いんですけど、サンプルパックなんかだとそうでないものも多いですね。打ち込みでやるのは難しいですけど、アンサンブルを知っているかどうかで大きな違いが出ます。
ただ、ディスコチャートに入っているものでも、これはファンクではというものは結構あります。
ソウルトレインのテーマとして知られるこの曲、さりげないですけど、Norman Harrisのオクターブのギターも効いていますね。メロディの補強やジャズテイストを加える時に使われることが多い技法です。
ギターのオクターブ奏法は、ソウルやファンクでも多用されますね。ギターの奏法については別記事で。
フィリー・ソウルを支えたリズムセクションであるMFSBはサル・ソウル・オーケストラに移ります。
インスタント・ファンクも重要なフィリーのバンド。メロディやコードが有るような進行とモーダルなところの切り替えはファンクとディスコのつながりを感じられるのではないでしょうか。
ワシントン D.C
ワシントン D.CといえばGo-Go swingですね。Marvin Gayeの出身地でもあります。黒人人口が多い都市です。
何と言ってもChuck Brown&Soul Searchersを取り上げない訳にはいかない。
コール&レスポンス、パーカッションが入った大編成のアンサンブルというところに特徴がありますが、この曲のモーダルなアプローチはファンクの典型ですね。リズム的にはヒップホップとのつながりも感じれるかもしれません。
Go Goのリズム的な特徴としてはイーブンではない(スイングしている16ビート)も特徴と言えます。Chuck Brownはモーダルなものからジャズ的なものも小粋に弾きますね。生演奏、生楽器中心のファンクはこれが最後だったかもしれません。
ニュー・ジャック・スイングはGo Goの影響を受けたもの。打ち込みファンクと考えると繋がりがわかりやすいんではないでしょうか。
東海岸のファンク全体に共通することですが、ラテンの影響が強い。パーカッションが多い。ダンスミュージックとして機能するために曲が長いことも特徴といえるのではないでしょうか。
Go Goのミュージシャンだと、Ricky Wellmanも有名かな。Milesバンドの最後のドラマーです。ジャズのファンクへの接近はテーマが大きすぎるから書かないですけど、常にダンス・ミュージックとジャズの関わりはあったということは強調しておきます。
Me’shell Ndegeocelloもワシントン D.CのGo Goシーンから出てきた人です。
初めの2枚はめちゃくちゃファンキーですね。Chris Daveの起用だったり、グラスパーとやったりしてますね。現代ジャズへの影響という点でも重要な人です。
凄いメンツでやったアルバムだが全然売れなかった模様。
最近はファンキーなものあんまりやってくれませんけど、Amp FiddlerとMe’shell Ndegeocelloが現在形のファンクを示してくれたのは大きかったですね。ヒップホップを経由したファンクというのが新しかった。
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