退屈さと戦う技術
次から次へと面倒なことが起こるので、なぜ面倒だという感情が起こるか考えてみる。
絶望は死に至る病と言ったのはキルケゴールだったか。絶望も退屈も面倒も同じだと感じる。
今、とにかく何もかもが面倒くさい。
まずいな。これに負けていった人間を何人も見てきた。
酷く厭世的な気持ちになる時は、面倒くさいという感情が必ずセットになっている。
面倒臭さと絶望はほぼ同じだ。
絶望は可能性が固定されることだろうとこれまで考えてきた。
何をやっても同じ事だと感じているのに創意工夫出来るのか。
出来ない。自分には無理だ。
主体性を持てないからだ。面倒臭いと感じるのも同じ理由だ。
やるべきことの多さ。やってもやらなくても同じ。自分が関与できることがほとんど無いときに、主体性を持てない。
主体性を持てないのが絶望と考えたほうがシンプルか。
リハビリの最大の敵は面倒くささだ。どれだけリハビリをしたとしても、元の能力に戻ることがないことはわかっていたとする。
生涯を費やしても自分の能力を伸ばすどころか、戻す事も出来ない。
それ、やる意味あるの?
そういう疑問がべったりとへばりつく。何度跳ねのけてもやってくる。
絶望が足元に迫って来る。
自分の中に答えを見出さなければならない。
自己満足は肯定的に使われることはほぼない言葉だろう。
だが、自己満足こそが自分を奮い立たせるのではないのか。
リハビリは自己満足する技術がないと続けられない。病気と戦うときもそうだ。
君の可能性は、健康な人の1/5です。どんなに努力しても、普通の人にはなれませんよと突きつけられたする。
これは苦しい。
人間は、進歩することを望むように作られているのではないか。
伸び盛りは良い。若いということはそれだけでも可能性がある。
未熟という事はそれだけで伸びる可能性が残されているわけだ。やっていないないことが多いから可能性が固定されていない。
病気と老いは同じだ。刻々と自分の可能性が失われていく。
今日できることが明日出来るとは限らない。
それどころか、一年後には確実にできることが減るとわかっている。
どうやって絶望しないでいられるか。どうやって退屈せずにいられるのか。
もともと乏しい能力の中で最大限やってきた。
少ない可能性というのを考えてやってきているから、残された可能性は普通の人よりはるかに少ない。
人より老いるのが早かったと言える。
その乏しい能力の中で、出来ることを限りなくうまくやることで切り抜けようとした。
だが、それは閉ざされた。
どうするかな。
面倒さに負けていった友人たちを思い起こす。いくらでも可能性はあった。
何者にでもなれた。たとえクズになったとしても、それは素晴らしい可能性だ。
若かった。能力もあった。周りに助ける人間もいた。
だが、本人にとっては可能性が固定されたように見えたのだろう。
賢さや能力の多寡は絶望と戦う助けにはならない。
周りに助けを差し伸べる人間がいるかいないかも究極的には関係ない。
周りがどんなその人間を必要と思っていたとして、何度それを伝えたとしても、本人が絶望している場合には届かない。
自己満足するには、どんな小さなことでも進歩できる余地を考えないと無理なのだろうと思う。
好奇心のみが打開策か?
だが、それも果てしなく難しいのではないか。
他者と比較してはいけない。面倒臭さに負ける。
できないことがあったとして、新たに方向転換したとする。初心者や学んでないことだから伸びしろはあるだろう。
だが、もちろんそれは前からその可能性を追求していた人に及ぶことはない。
比較した瞬間に面倒臭さにとらわれる。
好奇心を持ち続け、できなくなることが増える中でも常に新しいことをやり、少しの進歩でも満足する。
これは、ポジティブさの化物ではないのか。人間とは程遠い。
可能性が潰される度に新たな可能性を探すのか?
そこに愛着は?
打開策は他の人に可能性を見出すことだ。好奇心はやはりそう考えると、絶望と戦う武器だ。
ただ、好奇心だけでは足りない。好奇心を持つのと同時に、他者の可能性を見出すこと。
自分が愛しているものに没入する。自分はもう進歩できない。だが、誰かが自分ができなかったことをやってくれるかもしれない。
自分がやったことをやろうとする人が一人でもいて、その人が前に進めるなら、自分の人生はムダでなかった。
逆説的だが、究極的な状況では、自己満足は他者への献身となるのではないか。
英語で没頭するというのはdevote oneself toと言う。洋の東西を問わないもんだな。
没頭する、夢中になるというのは、限りなく自分の内面にむかっていても、他者につながっている。
今必要なのは正しさではない。自己満足には倫理も社会も必要ない。確信が必要だ。
若い人、健康な人の時間を節約することは最後まで出来る。
最後まで主体性を失わず、前のめりで死ぬために。
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