Ableton Moveでのコードワークの配信をやりました。Moveの場合は32パッドであり64パッドと違った工夫が要求されます。
クロマチックモードで弾くための知識を整理しました。動画2つご覧いだければ、Moveをコンパクトな打ち込みツールとして使うことは十分可能だと思います。
ライブ配信で話した内容をスライドにしました。復習用などにご活用ください…
前編は基本。コードの基本的な知識がない方でもご覧になればこういう仕組みだと理解できると思います。
後編はかなり応用的な内容を含んでいます。ルートレスボイシングやテンションノートの入れ方、音域が少ないものをカバーするためにパッシングコードを入れるなど伴奏やアレンジに役立つような知識についても話しています。
実際コード進行がある中でフィンガリングも変わりますので、コードの押さえ方だけ知っていても演奏では難しいことも動画をみたら一発でわかるかと。
Moveの場合、パッドの数が限られるためにフィンガリングを工夫する必要があります。配信で話しましたが最低音を基準にクロマチックに練習していくことをお勧めします。いずれもCをルートした基本フォームから説明しています。
パッドで重要なのは視覚的にパッドにコードやスケールを展開出来るかです。
フィンガリングは状況に応じて変える必要がありますので。
音を鳴らす前に歌ったりするのも耳の訓練になると思います。
メジャー
メジャー、マイナーとも5度は共通していますので、Rと5度の位置関係をまず覚えましょう。それから長3度を覚えていきたいですね。
最も基本となるフォームです。下の横一列Bb~Dまでカバーします。Ebを同じ横一列で弾きたい場合はフォームを変更する必要があります。
右側を有効に使えるフォームです。
基本フォームで弾こうとすると移動が多くなるので難しい場合もあります。
左を有効に使うフォームです。
マイナー
Rと5度の位置関係は同じなので、短3度の位置関係を覚えましょう。長3度が半音下がった形ですね。
基本となるフォームです。下の横一列でAm〜Db(mC#m)までカバーします。
こちらのフォームは下の横一列ではEbm,Emをカバーします。
基本フォームを移動するとこうなります。
こちらのフィンガリングもありますけれど、コードを押さえるときにはあまり使いません。が、ソロを取ったりマイナーケースケールを覚える時の目印になります。
ディミニッシュ
マイナートライアドの5度が減5度になったものです。5度の位置が半音下がると理解しましょう。
基本となるフォームです。下の横一列ではAdim~C#(Db)dimまでカバーします。
下の横一列でDdim,Ebdimをカバーするフォームです。このフォームでしか下の横一列ではDdim,Ebdimは弾けません。
基本フォームを移動して弾いています。Ebdimは別のフォームでも弾けますがこの2つのフォームで対応するので十分かもしれません。
下の横一列で唯一Edimを弾けますが、このフォームでコードを押さえることは少ないと思います。
オーギュメント
メジャートライアドの5度が増5度になったものです。完全5度が半音上がったものです。5度を目印に覚えておくといいですね。
基本となるフォームです。下の横一列でBbaug~C#augまでカバーします。
メロディックマイナースケールの短3度から始まるダイアトニックコードは理解するとマイナー系整理しやすいと思います。
左を有効に使う時のフォームです。
下の横一列でBaug~Eaugまでカバーするフォームです。こちらを基本と考えてもいいですが、メジャートライアドの関係を考えて初めのものを基本としました。
概ね2つのトライアドを覚えればかなりコードワークは対応できるということですね。
sus4
メジャートライアドの長3度が4度になったものです。
基本となるフォームです。下の横一列ではAsus4からDsus4まで弾くことが出来ます。sus4からメジャーになることも多いので交互に弾く練習をしてもいいと思います。
下の横一列ではCsus4からEsus4までカバーできます。Ebsus4,Esus4を下の横一列で弾こうとした場合はこちらのフォームでしか弾けません。
基本フォームを移動させています。sus4に関してはこちらの2つのフォームを覚えれば演奏で問題はないはず。
転回形について
動画で説明していますが、コードの最低音をオクターブ上に持っていくことを転回型(inversion)といいます。
Moveで演奏しようとした場合、音域の問題があるので、基本形(この場合の基本形は、ルートから順番に音を重ねていくという意味です。)でコードを弾くことが出来ない場合があります。
ジャズ・ポップス理論では並び方が違ってもコードの構成音が同じなら同じ機能を持つと考えます。なんて、乱暴なんやと思われると思うんですけど、そうです。乱暴なんです…
最低音をオクターブを上にしたものが転回型といいます。これならばMoveで基本形を弾けない場合でも問題なく演奏できる事が増えます。
Cメジャーで見てみましょう。
Cメジャーで、R,3,5の順番で音を積んである基本形です。先程もでてきましたね。転回してみましょう。
転回形では何よりオクターブの関係性を覚えてください。オクターブ上は右に2、上に2つの位置がオクターブです。右の斜め2つ上とおぼえてもいいです。視覚的に覚えることが非常に大事です。
これをCの第一転回形。1st Inversionと呼びます。
第2転回形です。第一転回形で最低音になった3度をオクターブ上に持っていっています。5度がベースになりましたね。
他のポジションの転回型のフィンガリング
メジャートライアドのEbのフィンガリングです。先ほど取り上げたフィンガリングです。ではこちらを展開します。
下の画像がEbの第一転回型です。オクターブの関係が先ほどと変わりました。左に3つ、上に3つがオクターブです。
左斜め3つ上がオクターブと覚えてもいいです。オクターブを目印にしてスケールやコードは覚えていくと整理されます。
こちらも覚えてしまいましょう。
パッドでスムーズな演奏するために必要なのは様々なパッドの見方です。
さらに転回してみます。
第2転回型になりましたね。
さらにもう一つの可能性 様々なポジションで転回形を弾く
もう一つのフィンガリングをとる場合のAメジャーを例にあげて考えます。先程とりげたものですね。
基本形を転回してみましょう。
第一転回型です。
第2転回型です。今まで出てきた転回形との共通点に気がついたのではないでしょうか。
すべての転回形をインプロしたい人なら練習してもいいと思いますけれど、曲を弾く時に、「あれ、これでは弾けない…」となった時に転回形を考えてみるのはいい訓練になると思います。
アンサンブルではベースが最低音を担うので、転回型やルートを弾かないボイシングでも問題はありません。
PushよりMoveの方がボイシングやフィンガリングは工夫する必要があるんですけど、それもまた楽器としての特性なので面白いですね…
4和音
ここからは4和音です。4和音で特に重要な、メジャー7th、ドミナント7th、マイナー7th、ハーフディミニッシュ(マイナー7thb5)は、ルート+3和音の組み合わせで作れると理解すれば、覚えることが少なくすみます。
また、音域が狭いMoveの場合は、ルートをベースに任せるルートレスボイシングを多用することになると思います。ルートを取り除いたら、どのコードになるかさっと認識できるといいですね。
メジャー7th
メジャー・トライアドに長7度(M7)が加わったものです。長7度はオクターブの半音下と覚えると覚えやすいと思います。
また、こうも覚えましょう。R+長3度からのマイナートライアド。C(ルート)+Em=Cmaj7ということですね。
基本となるフォームです。下の横一列でBbmaj7~Dmaj7までカバーするフォームです。
左を有効に使うフォームです。
下の一列でAmaj7が弾けるのはこのフォームだけです。A+C#m=Amaj7ということですね。
右側を有効に使うフォームです。
下の一列です。Emaj7です。E+G#m=Emaj7
下の一列でEbmaj7,Emaj7が弾けるはこちらのフォームだけです。
実用的には基本フォームをまず覚えて、基本フォームだけでは弾けないとなった時にこれらのフォームを覚えていく事が負担が少なく、楽しんで覚えられるのではないでしょうか。パッドで全部何が何でも演奏したいハードコアなあなたは全部覚えてください…
R+3和音と整理すると、ボイシングの自由度も一気に増えます。すべてのパターンを列挙するのは大変なので1例のみ取り上げます。
C+Em(第二転回型)です。ギターの6弦ルートなどのボイシングと同じですね。Cmaj7-Fmaj7などTonic-SubdominantのVamp(短い繰り返し)などトップノートを共通にできるので、スムーズな感じにできますね。鍵盤的なボイシングをしたい場合はいかに共通音を多く作るがポイントになります。
Vampはこういう感じのやつですね。
ライブ配信の補足です。
— うりなみ (@urinami) December 17, 2023
説明した特徴を適用させてトニックとサブドミナントのバンプを作ってみました。
まあ人間がやるほうが簡単なんですけど…
ギター、ベースは生楽器、ドラムは打ち込みました。鍵盤はPUSHで。知ってるだけで出来ることは結構あるのわかるんじゃないでしょうか… pic.twitter.com/iVGz9h9e6X
マイナー7th
メジャー・トライアドに短7度(7)が加わったものです。短7度はオクターブの全音下と理解すると覚えやすいと思います。
また、こうも覚えましょう。R+短3度からのメジャートライアド。C(ルート)+Eb(メジャー)=Cm7ということですね。
基本となるフォームです。下の横一列でAm7からC#m7までカバーするフォームです。
マイナー7thはメジャー251などで使用頻度も高いのでこのフォームだけで対応するのは現実的ではありません。
こちらも覚えましょう。右側を有効に使えるフォームです。
D+F(メジャー・トライアド)=Dm7
マイナー7thに関してはこの2つのフォームを覚えておくといいと思います。マイナー7th、メジャー7th、ドミナント7thなど4和音、テンションを含むものは5度はしばしば省略されます。
ルートの自然倍音列に5度が含まれているからです。厚みを欲しい場合は5度を弾き、そうでない場合はカットすればいいですね。
速度を出す必要がある場合、あるいはノブの操作を行いたい場合は5度を抜くフォームを選択されると楽しめるのでは…
ドミナント7th
メジャー・トライアドに短7度が加わったものです。メジャー7thコードの7度が半音下がったものと理解してもいいですね。単にセブンスと呼ばれることもあります。
また、こうも覚えましょう。R+3度上のディミニッシュ。C+Edim=C7です
ちょっと注意になるのですが、短7度はb7と表記されることもあります。今回は7と書いてあるものはb7と同意です。
下の横一列ではBb7からD7までカバーします。
こちらも覚えましょう。右側を有効に使えるフォームです。
Eb+Gdim=Eb7
下の横一列でEb7,E7を弾けるのはこちらのフォームです。
メジャー251の5やトライトーン・サブなどでドミナント7thは多用されます。この2つのフォームはマイナーの2つのフォームと共に早い段階で覚えると楽しく遊べるはずです。
ハーフディミニッシュ マイナー7thb5
マイナー7thの5度が半音下がったものです。
また、こうも覚えましょう。R+短3度からマイナー・トライアド。C+Ebm=Cm7b5です。
φこのように表記される場合があります。
ジャズ系だとハーフディミニッシュということが多くて、ポップスの人だとマイナー・セブンス・フラット・ファイブと呼ぶ人が多いかもしれませんが、どっちも同じ意味です。コードの呼称は方言みたいなものと思っておくといいと思います。
下の横一列ではAm7b5からDb(=C#)m7b5までカバーします。
こちらも覚えましょう。右側が有効に使えるフォームです。
下の横一列ではDm7b5,Ebm7b5を弾くことが可能です。
D+Fm=Dm7b5です。
下の横一列でEm7b5を弾ける唯一のフォームです。使用頻度は低めだと思います。上記2つのフォームを覚えて余裕がある方はどうぞ。
マイナー251の2で使われる使用頻度が高いコードです。4和音、ここでは基本形を取り上げましたが、もちろん転回型も存在します。いろいろ試して楽しんでください…
応用的なものはnoteで有料で売ってボロ儲けを目論んでいます…AdsenseとMoneytizer分の穴埋め、どうすればええですかね…
追記:2025/01/18
今年こそパッドドリームを追うぜということで、有料記事を書いてみました。ハードコアパッド論と銘打ち究極のパッドプレイを目指すための方法論やハーモニー、スケールなどを取り扱います。
フォームについては今までブログに書いてなかったことですけど、プレイの上限を決めるものだと思いますので結構細かいことを書きました…
2025/01/19
当ブログで最も長期にわたったカテゴリーだった押して覚えるコードとスケールですが、今回の記事で終わりにしようと思います。その経緯について書きました。Abletonの電子書籍も出さないと行けないですしね。
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