屈服しないための楽しむ技術 | 無理ない暮らし
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屈服しないための楽しむ技術

無理ない暮らし
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風が強い。

が、今日も散歩に行く。

彼女が「こんな天気なのに、散歩に行くの?」と聞いた。

行くよ。どんな天気であっても決めたことをやらないという選択肢はないんだ。

まあ、こういう天気でも楽しめることはあるよ。

「楽しいって言ってるけれど、楽しいって言ってる時はいつも苦しそうだよ」

彼女はちょっとため息を付いた。

わかっている。

楽しもうとするのは簡単に折れてしまう自分を鼓舞するためだからだ。

他人に負けるのは仕方ないことだけれど、自分に負けるのだけは嫌なんだよ。

敗北を拒否する。

マリナーズのスローガンであったじゃない。知らないか。

ドアを閉めた。マンションの窓から彼女の影が見える。雨と風で視界が狭い。

事故からのリハビリは本当にきつかった。痛みのあまりに失神したこともある。

階段で何度も転倒したな。

100メートルを歩ききるのは永遠に掛かるように思えた。炎天下でうずくまって熱中症になったこともあったな。馬鹿だと思う。

自分はポンコツだ。普通の人が何の苦労もなく10できることに対して1くらいしかできることがない。

普通の人なら何もしなくても能力は維持できる。ポンコツな自分は維持するだけでもきつい。

なんとか生活できるようになっただけでも上出来かもしれない。

上出来だとPTもドクターも言ったが、それは自分にとっては上出来でも何でもなかった。

自己定義の問題だ。

誰もが自分はこのような人間というイメージを持って生きている。

出来ないことで思考停止してたまるか。楽しめ。あらやる方法で前進する方法を考えろ。

止まったらどうせ寝たきりになって死ぬ。このまま動けなくて死ぬくらいなら、前のめりで死ね。

憐憫もいらないし共感も必要ない。

他人に楽しめと言われたらこんなポンコツな体で楽しめるかと怒りもするだろう。でも、自分は楽しむ。人に楽しめなんか言えないけど。継続しない選択肢はない。

狂気だろうな。自分の中で突き動かすようなものがなかったら、とうに死んでる。

自分にとっては、「無理がない」は楽にできると言う意味もあるが、「限界がない」という意味もある。どっちかというと後者だな。

これしかないのだ。うんざりする。どんなに生き方を変えようとしても無理なのだ。

なら、楽しんでやろう。楽しくないものでも楽しんでやるのは自分の戦い方だ。自分が戦うのは他人ではない。自分自身だ。

『笈の小文』は二度目の事故の後に貪るように読んだ。古典は自分にとっては遠い世界の話ではない。

学ぶことが多い親しい存在となった。芭蕉は日本人に愛されるというが、この激烈な怒りを理解して共感できるのだろうか。

自分の中では、芭蕉はこういう語り口に聞こえるのだ。

百骸九竅の中に物有。かりに名付て風羅坊といふ。誠にうすものゝかぜに破れやすからん事をいふにやあらむ。かれ狂句を好むこと久し。終に生涯のはかりごとゝなす。ある時は倦で放擲せん事をおもひ、ある時はすゝむで人にかたむ事をほこり、是非胸中にたゝかふて、是が為に身安からず。しばらく身を立む事をねがへども、これが為にさへられ、暫ク学で愚を暁ン事をおもへども、是が為に破られ、つゐに無能無芸にして唯此一筋に繋る。西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶における、其貫道する物は一なり。

超訳

俺の中に抑えられないものがあるんだよ。仮に風来坊と言っておこうか。本当に風で破れてしまうようなペラペラのもののこと言ってんのかな。薄っぺらいプライド。そいつは俳句をずっと愛してた。で、俳句を一生をかけてやりたいことと思った。まあ、俳句で、嫌になってやめようとしたり、人に勝ち誇ろうとしたこともあった。で、そいつが胸の中にあるもんだからさ、俺には安息がなかった。人並みに生きようと思うこともあったけど、こいつがあるからダメだった。勉強して自分が愚かじゃなくなろうとしたけど、こいつのために続けられなかった。最終的に何も出来なくてこれしか残らなかったよ。西行の和歌、宗祇の連歌、雪舟の絵、利休の茶。

みんな共通してるのは同じこと。この抑えられないもののことだよ。

笈の小文

苦しみと戦うの最も困難な方法で戦ってやる。もっとも困難なのが楽しむことだろう。苦しみを耐えるより圧倒的に攻撃的だ。それは人生の主導権を自分に取り戻そうとする試みだ。

病気や怪我は、ほとんどの場合人生の一部になってしまう。全部かもしれない。

継続しないと言う選択はゼロだ。

楽しいだけならいつだってもやめてしまえる。

楽しかったね。それで終わりだ。

痛みを嘲笑え。病気や苦しみに屈服するな。

とハイテンションになって脱力の練習して歩いてきたんですけど、部屋に帰ったら、高熱が出て、ふぅとため息をつかれました。憐れむような視線が辛い!

ふう。まあ、でもこう考えるとなんとか私はできるんですよね。皆さん、いろんな技術があったら教えてください…

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なかなかに芭蕉先生はあれな人です。漢文世界を持ち込んだのは、多分、格好いいからじゃないですかね。独自用語を使う人は、やべー奴と現代では言えますが、芭蕉先生はまじでやべーです。現代に生きていたら売れないミュージシャンですね。間違いない。全人類が持っている厨二病を煮染めたような世界観がパンキッシュで最高です!

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